こんにちは。AGING WELLの大工×建築士の野澤万里です。
4月初旬から通っている「環境塾」の2回目の内容について、ブログをご覧の方に共有したいと思います。2~3回目は、家づくりを考えている皆様より、僕たち設計実務者のためになる作図・シュミレーション作業のお話でした。ブログ更新の遅れを取り戻すため2講義分をまとめて書き記します。
そもそも「環境塾」とは?→1回目のブログをチェック
「環境塾」の前に学生の授業に参加しました
「環境塾」の講義が16:00~始まるのですが、その前に学生に向けた授業を一緒に見させていただけることに。そこでは環境解析のソフト、Rhinoceros(ライノセラス)・Grasshopper(グラスホッパー)・ClimateStudio(クライメイトスタジオ)という3つのソフトを組み合わせて光環境解析の授業が行われていました。アルゴリズムデザインラボの重村先生が丁寧に教えてくれますが、僕はほとんどついていけずでした。学生の方々はソフトの基本操作をすでにマスターしてから授業に臨んでいるようでした。文章ではイメージを伝えきれませんが、近未来のシュミレーション設計ツールで、学生たちが就職するころには当たり前になっているのかもと思うとワクワクします。
授業の様子
本題の「環境塾」へ
教室を移動し環境塾の講義へ。今回の講師は、福井コンピュータの松谷さんです。住宅用のCADソフト「アーキトレンドZERO」の使い方を教えていただけるようです。僕自身も5~6年お世話になっているアーキトレンドですが、CADの基本操作を実演形式で披露していただきました。
敷地と道路の入力をし、その後、斜線の検討をしながら敷地に建つ建物のボリュームを検討します。そこから平面図を描き3Dパースを自動立ち上げ、3Dを確認しながら平面図を編集、立面図を自動立ち上げといった感じで、サクサクとプラン作図の実演が進みます。ここまでの作業の中で僕が知らない便利機能もたくさん紹介されていて、僕がやるより倍くらいの速さで作図されていました。もっと早く知りたかった!これからは便利機能を使って素早く作図していきたいです。
法改正について
建築基準法の改正があるごとに素早くバージョンアップをしてくださる福井コンピュータさんですが、CAD操作のほかに法律関係の情報も教えてくれました。2025年に施工される4号特例の縮小(国交省)についての情報です。
2025年から確認申請の添付書類が増えるという情報の後に、仕様書を提出すれば構造図と省エネ計算の添付は不要になるとのことでした。住宅の耐震性を上げようとする法改正のはずなのに、簡単な仕様書を出せば、肝心の構造図が不要になるってどういうことなんでしょうか。家づくりにおいて、「命を守る」ということを何よりも大切にしている僕たちとって、何だか納得のいかない内容でした。さらに電気設備図などの添付が必要になり申請の手間と時間だけが増えて、性能面が向上しないということになるのでは?と心配になりました。
神長さんのQPEX講座
2回目の終盤から3回目にかけて、神長さんのQPEX講座でした。QPEXは「新住協」が開発した各種面積と外壁や屋根の断面構成を入力すると断熱性能や冷暖房の負荷などが割り出せるソフトです。計画中のAGING WELLの規格住宅を使ってシュミレーションしてみます。宿題として、床面積・外壁の面積・屋根の面積・窓の面積・基礎の面積などを拾い出してくるようにと言われましたので、アーキトレンドを使って面積の拾い出しをしました。
アーキトレンドで面積の拾い出し
QPEXの入力は、拾い出した各箇所の面積と窓の種類やガラスの種類などなどを入れていくという作業でした。少しコツがいる部分もありましたが、入力画面の端に入力の考え方を書いてくれているので、マニュアル本を開くことなくある程度は入力できました。
QPEX面積入力画面
QPEX窓の入力画面
計算結果
今回は練習のためAGING WELLの断熱仕様ではありませんが、新住協が提唱する「Q1住宅レベル2」の物件になりました。
結果を見て「おぉ!」と思っていたら、「大事なのはここじゃないよ」と神長さんが言いました。本当に気にすべきはQ値ではなく、冷暖房負荷の方だと教えてくれました。計算結果を見ると暖房時の熱負荷1539kwh、冷房時の熱負荷2001kwhと出ています。ここから神長さんは、冷暖房負荷の数字を下げるために、断熱の厚みや窓の種類を変えてみるのだそうです。すると、仕様を変えたときのコストアップと冷暖房需要の下がり方の関係性が見えてくるのだそうです。QPEXの素晴らしいところは、断熱仕様の変更が即時に計算結果に反映されて、どれくらいの効果があったのかが目に見えてわかることです。随時計算結果を確認しながら仕様を変更して丁度よい仕様を見つけます。
また冷暖房の必要な時期や設備容量も出てくるので、エアコンの選定に役立つとのことでした。
冷暖房の稼働期間(左下グラフ)
冷暖房設備必要容量
今回の神長さんの講義で一番頭に残った言葉は、「シュミレーションと実測はセットですよ」というものです。提案した物件がシュミレーション通りになっているのか、そうでないのかはちゃんとデータを取って検証しなければ、ただの自己満足で終わってしまうということです。また、検証することで傾向が見えてくるので、シュミレーションの精度や施主様に伝えるポイントが見えてくるのだそうです。神長さんのシュミレーションは±2~℃くらいの精度だそうです。
過去の失敗例から南面の窓の大きさの注意点なども細かく教えていただきました。今後の設計に役立つ情報が盛りだくさんの貴重な講義でした。
今回の学びとまとめ
■アーキトレンドの操作について、まだまだ使いこなせていない便利機能がたくさんある
■QPEXは断熱や窓の仕様を考えるときに使うと便利
■シュミレーション結果から冷暖房の必要容量の目安を知ることができる
■シュミレーションはあくまでシュミレーション。実測が大事!→実測のコツも聞いてみたいと思います。
室温のプレゼンテーションで施主様にわかりやすい「ホームズ君」というソフトもご紹介していただいたので、こちらもチャレンジしてみようと思います。どれだけシュミレーションしようともわかりやすく伝わらなければ意味がないので。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回もたくさん学んできます!