日本の産業廃棄物について

2024.07.23

こんにちは。AGING WELLの大工×建築士の野澤万里です。今回は、先日伺った埼玉県の産業廃棄物処理業者である石坂産業様の工場見学ツアーで学んだことをお届けします。環境問題に本気で取り組む石坂産業様の様子をお伝え出来ればと思います。

 

石坂産業株式会社について

まずは一本の動画を見ていただきたいです。→石坂産業株式会社YouTubeより
石坂産業様のスタッフである高継エミリーさんが工場案内の前に、資料を使って会社の取り組みを紹介してくれました。この動画は会社紹介の冒頭で放映された動画ですが、僕は動画を見ながら涙が出そうになりました。

「経済成長、人間中心の社会を優先し、限りある資源を使いつくしてきた結果、地球が悲鳴をあげている」

この言葉がすべてを物語っていると感じます。昨年末ヨーロッパ視察のツアーに参加したときに、ヨーロッパ諸国の本気の環境対策を目の当たりにし、「本気で地球がヤバい」ということを実感させられたと同時に、日本の環境に対する危機感の無さがものすごくわかりました。この動画を見て、ヨーロッパ視察のときの衝撃が頭の中で蘇ってきました。

石坂産業様は、普通の産業廃棄物処理業者なら最終処分場(埋め立て処分や焼却処分)に行ってしまうところを、98%をリサイクル(再資源化)出来るという驚異の技術を持った会社です。(一般的なリサイクル率は70%前後)また、このままのペースでゴミを出し続けると、15年ほどで埋め立て最終処分の限界が来ると言われています。

 

 

なぜそのような取り組みをするようになったのか?

高度経済成長期におこった「4大公害」がきっかけになり、日本の環境対策の始まったと言われています。当時は、地球を痛めていただけでなく、人体にも影響が強い化学物質が、なんの規制もなく大量に大気や土壌、河川、海洋へと放出されていました。

また記憶に新しいのが、「ダイオキシン問題」ですが、当時、埼玉県の野菜にダイオキシンが付着しているということが報道され(のちに誤報だったとされる)、埼玉県の産廃業者の中でも、一番新しくて大きな焼却炉をもっていた石坂産業に地元住民の怒りの矛先が向きました。※当時からダイオキシン対策済の焼却炉を持っていたが、風評被害は続いたそうです。
この問題をきっかけにして、石坂産業の現在の取り組みがスタートしました。

 

脱産廃屋へ

NIMBY(環境用語/Not In My Back-Yard) 〈社会に必要だけれど、家の裏庭にはあってほしく無い業者のことを指す〉
このイメージを払拭し、「地域に必要とされる会社に」をスローガンに掲げる石坂産業様の取り組みをいくつかご紹介します。

 

地域への配慮

一番の優先課題として埃や騒音の遮断です。廃棄物処理施設の全てを建屋で囲んでしまって、さらに外側には防音壁を設け、中に集塵機を取付け音や埃が外に漏れないようにしています。また雨水を貯めて出入りするトラックのタイヤを洗浄し、道路を汚さないための配慮がされています。また定期的に地域の公道の清掃も行っているようです。

 

遮音壁の写真

 

雨水利用の様子(石坂産業株式会社YouTubeより)

 

地域課題の解決

会社があるエリアは、昔は農業がおこなわれて手入れが行き届いた里山があったそうですが、近年は手入れされなくなったため薄暗く、不法投棄が頻繁に行われる場所になっていることに気づいたそうです。この里山を管理し、日本固有種である生物・植物を保護したり、腐葉土を作って野菜を育てたりと環境問題に触れる施設として蘇らせました。不法投棄の根幹には「教育」の問題があるのでは?ということで、この里山を使って子どもたちが楽しく学べる機会も提供しているそうです。

 

里山を蘇らせた施設

 

「循環」をイメージした木でできたトイレ

 

NIMBYからPIMBYへ(Please In My Back Yard)

石坂産業では現在210名ほどの社員さんが働かれていて、3K(きつい・汚い・危険)という業界のイメージを払拭するために、常に社内の労働環境を改善するための協議が行われているそうです。その結果、平均年齢41.6歳(20~30代の割合47%、40代28%、50代以上28%)という各世代がまんべんなく在籍する会社になっているそうです。

特に驚いたのは、離職率6%ということと、女性比率42%(管理職57%)という数字で非常に働きやすい環境であることがうかがえます。社員食堂や休憩スペースにもこだわっていて、工場見学中に社員さんに出会う場面もありましたが、皆さん活きいきと楽しそうに仕事に取り組んでいる印象でした。

地域の人たちを雇用することも含め、地域に必要とされる会社なんだなと思いました。

 

 

工場見学へ

まずは、コンクリートを処理するエリアを見学しました。重機を使ってコンクリートを砕き、鉄筋と分けながら次の場所へ運びます。驚いたのは重機が電力で動いていること。この重機は日立建機と共同開発したものらしく、排気ガスも出ないため地球環境に良いだけでなく、労働者の人体への悪影響も抑えられるのです。また天井部分には、採光窓が設けられ、天気の良い日には照明なしで作業ができるほど明るくなるようです。

 

 

分ける工程

【ふるって分ける】
砕いたコンクリートをふるって大きさごとに分けていく機械を見せていただきました。この機械はどうしても振動が起こるらしいのですが、振動を電力に変える研究がされているようです。

【磁石で分ける】
金属の中でも磁石につく金属とそうでないものを分ける工程があり、磁石につく金属は上に吸い上げられていきます。

【風を使って分ける】
農機具の「とうみ」をモチーフに作られた機械らしく、細かなものは風で飛んでいき重たいものが残るという仕組みです。

【色を分ける】
細かい解体ガラをお米の色選別に使う機会を使って色分けしていくそうです。

【人の手で分ける】
機械を使って分けきれなかった混合廃棄物は、人の手を使って分けるしかないようです。レーンに流れてくる廃棄物を作業員さんが丁寧かつスピーディーに分けていきます。この工程を見たときに、現場サイドでももう少し配慮すれば、処理の手間も減らせるのでは?と感じました。

 

 

今の家づくりを産廃処分の観点から見る

日本のゴミの1割が家庭ゴミ、9割が産業廃棄物という割合で分けられるそうです。その中でも、建設業の廃棄物は第三位の多さなのだそうで、普段の仕事がどれだけ地球環境に負荷をかけているのかという、意識が問われる業界なのだと認識しました。裏を返せば、日本を変えられる職種の第三位が建設業ということになりますので、これからの自分たちの行動が日本や地球を変えていけるという意識で取り組まないといけないと思いました。

工場見学の後、石坂産業の社員さんに質問できる時間がありましたので、ズバリ「持ってきてほしくない廃棄物はなにか?」と聞いたところ、

「今持ち込まれているものは、ほとんどが30~40年ほど前の建物を取り壊したもので、まだ材料の構成がシンプルでやりやすい。5年ほどのスパンで建ち替わる、ハウスメーカーの住宅展示場の廃棄物は、「プラスチックと木材」、「プラスチックと金属」など、複合的なものが多く、分けるのに苦労する。」

という答えでした。石坂産業ではほとんど分けられると言いますが、日本の中のごく一部の話であって、これに甘えてはいけないと感じました。「実際に困るのは自分たちの子の世代ではないか」という言葉が心に残ります。

 

今、自分たちに何ができる?

最後に今回の見学に参加した方々でいくつかグループを作り、今回の学びとこれからの行動についてディスカッションする時間があり、意見交換をしました。日本の廃棄物の現状を知ってしまった以上、明日から何かを変えていかなければいけないと思いました。

■現場のゴミを分ける
入れてはいけないものが混ざっているケースも少なくないらしく、産廃処理の機械の故障や、人身事故につながることもあるそうなので、現場で徹底していければと思いました。すでに6種類もの分別を行っているという会社もおられて驚きました。

■「外しやすさ」や「土に還るかどうか」を基準とした素材選びや工法選びが必要
吹付系の断熱材ははがすのが困難であり、手作業でそぎ落とす必要があるためお勧めできない。野澤工務店が標準採用している「木繊維断熱材」は、はがしやすく土に還る素材なのでよい選択をしているのではないかと思いました。

■発信が大事
知った人がしっかりと発信し、より多くの人に知ってもらうことが、環境対策を加速させる一つの方法になると思います。また、教育の中にも「環境問題」を意識させる何かを入れていかなければいけないのではないかという意見も出ていました。

 

まとめ

「”溢れかえるゴミが資源になる社会を” ”今こそ人間中心の考え方から地球中心の考え方へ” 」(石坂産業様YouTubeより)

今回は、日本で環境対策に本気で取り組む企業を見学することができ、背筋が伸びる気持ちと、これから行動を変えていかなければという焦りも感じました。

 

 

ロングライフラボの清水さんがいつも仰っている、「知る」=新たな情報を受け取ることで、「気づき」が生まれ「行動が変わる」という流れを作るべく、いろんな方に今回の学びを伝えていきたいと思いました。「1人の100歩より100人の1歩」。このブログを書いたことが僕にとって最初の一歩。伝え続けようと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。それではまた。

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