こんにちは。AGING WELLの大工×建築士の野澤万里です。前回に引き続き新潟研修第2弾ということで、今回は木を育てる「山」と、木を木材に加工する「製材所」の視察の様子をお届けします。
製材所へ
朝食を済ませ、2日目の始まりは製材所の視察からでした。普段は目にしない丸太の状態から、外壁材・小割材・柱・梁へと製材されます。木の太さや曲がりを見ながらどの材料を作るのに適しているかを判断し、無駄が出ないように製材するには長年の経験と木を見る力が要るそうです。この無駄なく製材をすることを「木取り(きどり)が良い」というそうで、捨てる材を少なくし1本の木からとれる材をより多くできるようにと考えられています。その結果、歩留りが良くなり商品を適正価格で市場に出すことが出来るそうです。
製材の様子
普段見ることのない木材乾燥窯の中も見せてただきました。
乾燥中の木材
山へ
製材所の見学の後は山の視察へ。約80年前に植林された杉の伐採現場を見せていただきました。新潟の山では斜面がきつく、また雪も積もるためS字に曲がって育つ杉が多いようです。また搬出する道が曲がっていたり狭かったりするので最大4mの丸太しか運び出せないのという特徴もあるそうです。
木材を製造する林業家と住宅を設計する建築家という二つの顔を持つ林業建築家の石田さんはこう言います。「設計は山から考えるんだよ。」
詳しく聞いてみると、「山から取り出せる材の大きさには限界がある。直下率や構造区画の大きさに配慮した美しい設計にすれば、持ち出しやすい4mや3mの材だけで難なく梁組が出来てしまう。梁の太さもさほど太くならないのでこの山の木を余すことなく使える。」ということでした。
もう一つ「地材地建」という素敵な言葉も教えていただきました。これは地元の木材を使って地元の家を建てるという意味だそうで、このようにすれば地元の木にも需要が生まれ、地元の木に需要が生まれると山は手入れされ地元の林業が潤う。地元の木が使いやすくなれば遠くから木を運んでくる手間が省け、最後は家を建てる家族が得をする。といった良い循環が生まれます。日本の各地域ごとにこのような動きが広まれば、日本の林業も山並みも環境も経済も良い方向に回っていくのではないかと思いました。
新潟では同じ家づくりに携わる「山」と「設計」と「現場」がものすごい近さで共存共栄出来ていることに感動しました。普段設計を行う建築士ですが、木材の製造過程にまで気を配れる建築士はいったいどれだけ居るのだろう。僕も石田さんのような建築士になりたいと心から思ったのと好循環のきっかけを作れる人になりたいと思いました。
伐採後の切り株
造材
杉の木の1本の長さは20~26メートルほど。山からおろせるように、切り倒した直後には何に使うかを決めて短く切っていきます。これを「造材」というそうで、造材の腕が木取りにもかなり影響するようです。
一般的には太さのある根元から順に造材していきます。根元の2mは曲がっていることが多いためバイオマスに使われます。2番目の2mは合板に。そこからは木材として使いやすく山から降ろしやすい4mに切っていくそうで、下から1番玉、2番玉、3番玉と呼ばれるそうです。残った一番上の部分や杉の葉はクラフトジンやアロマの原料になるようです。本当に捨てるところがないなと感心しました。
山から下り、遅めのランチは、新潟の人気レストランの「いこて」へ。美しい木製の構造をそのまま現しにしたドーム型の建物で魚沼杉のクラフトジンと共においしいランチをいただきました。
百年の館
この日の宿泊先は、古民家を移築改修した宿泊施設「百年の館」でした。玄関から土間続きでキッチンへ、土間から一段上がった囲炉裏のある居間と隣には8畳の間が3つあり、そこに布団を敷いてみんなで寝ます。この日は石田さんも一緒に宿泊し、囲炉裏を囲んでご飯を食べながら建築の話や世間話で盛り上がりました。
翌朝早くから石田さんの生まれ育った集落の近くで雲海が見えるポイントへ連れて行っていただきました。秋ごろによく見えるらしく、夏だとみられないかもと言われながら車で山道を登っていきました。
開けた場所について車を降りるとそこには雲海が広がっていました。少し待っていると、朝日が昇り始めました。なんだかいいことが起こりそうな予感がするとても素敵な瞬間でした。
最終日の3日目は新潟の有名建築や伊礼さん設計の住宅などを視察させていただきとても勉強になりました。
これで新潟ツアーのレポートは以上になります。3日間お世話になった石田さんありがとうございました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。