大工不足の時代に、地域の家を誰が守るのか
こんにちは。野澤工務店の野澤万里です。
最近、大工さんが減っているという話を耳にすることが増えました。建築業界の中では以前から言われていたことですが、僕自身も南大阪・熊取町で家づくりをしている立場として、この問題にはかなり危機感を持っています。国土交通省の資料でも、木造住宅の担い手である大工の就業者数は、令和2年に約30万人となり、20年間で半減していることが示されています。また、若い大工さんが少ないことも大きな課題です。
ただ、これは単に「職人さんが減って困る」という業界だけの話ではありません。これから家を建てる人にとっても、今ある家を直しながら暮らしていく人にとっても、とても大切な話だと感じています。

家は、建てて終わりではない
家づくりは、完成した瞬間がゴールのように見えるかもしれません。けれど実際には、家はそこから何十年と使い続けていくものです。暮らしが始まれば、点検があり、修繕があり、メンテナンスがあります。子どもが成長したり、巣立ったり、親から家を受け継いだり、老後の暮らしに合わせて間取りを見直したりすることもあります。
そのたびに、家には人の手が必要になります。
新築のときだけきれいにつくればいい、という考え方では、少し足りないのではないかと思っています。長く使える家をつくること。そして、必要なときにきちんと直せる家にしておくこと。その両方が大切です。
これから増えていく、直す仕事
これからの時代は、新築だけではなく、既存の家をどう活かすかがますます大切になっていくと思います。南大阪や熊取町にも、昔から建っている家があります。親世代から受け継ぐ家もあります。空き家になっている建物を、もう一度暮らしの場所として整えることもあるかもしれません。そのときに必要になるのは、ただ新しい材料を取り付けるだけの仕事ではありません。今ある家の状態を見て、傷みを見つけ、構造を読み、雨や湿気の影響を考えながら、その家に合った直し方を考えることが必要になります。これは、図面だけでは完結しない仕事です。
古い家を直すには、現場で考える力がいる
既存の家を直す仕事には、新築とはまた違う難しさがあります。古い家は、一軒一軒つくり方が違います。図面が残っていないこともありますし、壁を開けてみて初めてわかることもあります。過去の改修の跡があったり、想定していなかった傷みが見つかったりすることもあります。その場で見て、考えて、どう納めるのかを判断する力が必要になります。構造を見る力。材料を見る力。雨仕舞いを読む力。湿気の流れを考える力。そして、実際に手を動かして形にする力。
そこには、やはり大工の経験と技術が必要です。
僕自身、今は毎日大工として現場で作業しているわけではありません。主な仕事は建築士としての設計や、お客様との打ち合わせ、現場管理です。それでも、大工として現場に立ってきた時間は、今の設計にも大きく影響しています。図面を描くときにも、ここはどう納まるのか、現場で無理がないか、将来直すときに手を入れやすいか。そういうことを自然と考えます。建築士として考える力と、大工として現場を読む力。その両方を大切にしたいと思っています。

見えないところに、仕事の質が出る
家の中で、お客様の目に触れる部分はとても大切です。床や壁、天井、家具、照明、外観の佇まい。そうした見える部分が美しく整っていることは、暮らしの心地よさにつながります。けれど本当に家を長く支えているのは、見えない部分です。床下、壁の中、天井裏、下地、構造、断熱、気密、防水。完成すると隠れてしまう場所に、どれだけ丁寧な仕事ができているか。そこに工務店の姿勢が出ると思っています。見えるところだけをきれいに整えることは、ある意味ではできるのかもしれません。でも、見えないところを丁寧につくることは、家に対する考え方そのものが表れます。僕は、見えないところを雑にして、見えるところだけをきれいに整えるような家づくりはしたくありません。十年後、二十年後も安心して暮らしていただくためには、完成したら隠れてしまう部分こそ、丁寧につくる必要があります。
地域に技術を残すということ
大工が減っていくということは、家を建てる人が減るということだけではありません。地域の家を直せる人が減るということでもあります。家に何かあったとき、すぐに相談できる人が地域にいること。建てた家を知っている人が、長く見守っていけること。困ったときに、現場を見て判断できる人がいること。それは、暮らしの安心につながります。家づくりに使われるお金は、単に建物を買うためのお金ではありません。地域の職人や協力業者の仕事になり、技術を育て、次の世代へつないでいく力にもなります。もちろん、家づくりで一番大切なのは、住む方の暮らしです。けれどその家づくりが、地域の技術を残すことにも少しつながっている。そう考えると、どこに家づくりを依頼するかは、地域の未来にも関わってくるのではないかと思います。
若い大工を育てることも、工務店の役割
大工不足の時代に、もう一つ大切だと感じていることがあります。それは、若い大工を育てていくことです。若い人を育てることは、会社にとって簡単なことではありません。時間もかかりますし、手間もかかります。すぐに会社の成果として見えるものでもありません。それでも、地域に根ざして家づくりを続けていく工務店として、ここから目を背けてはいけないと感じています。
家を建てる技術、直す技術、見えないところを丁寧に納める感覚。そうしたものは、本だけを読んで身につくものではありません。現場で見て、考えて、手を動かしながら、少しずつ体に染み込んでいくものです。若い人が大工という仕事に誇りを持てること。地域の家を守る技術を、次の世代へつないでいくこと。それも、これからの大工工務店にとって大切な役割だと思っています。
熊取町で家を守り続けるために
野澤工務店は、南大阪・熊取町で地域に根ざして家づくりをしてきました。家は商品ではなく、暮らしの器です。そして、その器は人の手でつくられ、人の手で直されながら、長く使われていきます。大工不足の時代だからこそ、地域に技術を残すこと。若い大工を育てていくこと。直せる家をつくること。見えないところを丁寧に納めること。そうした当たり前の仕事を、これからも大切にしていきたいと思います。南大阪で家づくりを考えている方にとって、家を建てる会社を選ぶことが、これからの暮らしだけでなく、地域の技術を守ることにも少しつながっている。そんな視点を持っていただくきっかけになればうれしく思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。それではまた。


